月下美人が堕ちた朝
「あれ?」

フミカが立ち上がって、男の子に近付く。

男の子もフミカに気付くと、深く礼をした。

それがスバルだった。

その後に見た、彼の笑顔に欲情していく自分が分かった。

フミカに向けられている笑顔を独り占めしたい、と、そう思った。

フミカはあたしに振り向いて言った。

「この子、スバルっていうの。
地元の後輩」

あたしは立ち上がってお辞儀をした瞬間、持っていたバッグから携帯電話と財布を落とした。

慌てて拾おうとした瞬間、大きな影があたしの視界を暗くして、それが携帯電話を拾った。

「俺とおんなじ機種だ」

そう言って、スバルは勝手にあたしのメモリーに自分のアドレスをいれた。

「俺、スバルっていいます。
メールしてくださいね」

夕暮れのオレンジがあたしたちを染めて、いつもの風景が美しく見えた。

ただ其処に、スバルが居たというだけで。
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