月下美人が堕ちた朝
「ギターを弾きに実家に帰る」とスバル言われる度、あたしは酷く激怒していた。

そのまま、帰ってこないような気がしたから。

それが凄く、怖かったのだ。

朝日が反射して、ギターのボディがあたしの視界を刺激する。

まるで怒られてるみたい。

きっとこのギターは、スバルがあたしの部屋に住み出してから二年、一度もスバルに抱き締められていないのだから。

あたしがベッドから降りたとき、部屋のドアが静かに開いた。

喪服を着た綺麗な女性が、大丈夫?と、冷たく言った。

「大丈夫?
貴女もホストクラブに行ってたお客さん?」
スバルに良く似た端正な顔立ちが、あたしの胸を更に締め付けた。

あたしは首を振り、恋人だと遠慮がちに言った。

もう自分がスバルの恋人だと言える自信がなかった。

え?、と、彼女は言った。

「え?
貴女が恋人?
スバルと一緒に住んでたの?」
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