月下美人が堕ちた朝
あたしがスバルを縛りつけることで、お姉さんまでも傷付けていたなんて。

スバルは家に帰る意思があったのに。

それを踏みにじったのは、このあたしだ。

だけど、と、彼女が続けて言った。

「だけど、私はスバルを殺した奴を絶対に許さない。
何があっても、私の弟だからね。
だから警察が来たら、一昨日のこと全部話して。
協力して欲しいの」

あたしは返事をした後に、もう一度スバルに逢わせて欲しいと頼んだ。

彼女は少し戸惑ったあと、あたしの必死な形相に負けて承諾してくれた。

この部屋にずっといたいような気がしたけれど、スバルの陰が見え隠れして逆に切なかった。

彼女の背中についていき、すっかり周りに人がいなくなったスバルの布団の横に座る。

「ゆっくり、していってね」

そう言って彼女は、あたしとスバルを二人きりにしてくれた。

足音が消え、雀の鳴き声を聞きながら、あたしはスバルに言った。

「痛かった?
でも、仕方ないよね」
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