月下美人が堕ちた朝
ツバキさんが短い悲鳴をあげた後、それにつられて二人の男性が部屋の中に入ってきた。

あたしは何度もマナミを殴り、その勢いで口紅がはみだしていた。

ピンクベージュの色が口許を光らせ、妙にセクシーに見える。

この唇がスバルの唇と重なったと思うと、余計に怒りが増した。

もう感覚のない右手で、もう一度殴ろうとしたとき、腕を誰かに掴まれた。

「またこいつかよ」

先程入ってきた男の一人が、溜め息を吐いて言った。

暴れるのに、腕を掴んで離さない。

男の力には、到底勝てやしないのだ。

マナミはもう一人の男に抱きかかえられ、左頬を押さえている。

「だからホストなんて仕事はやるもんじゃねぇんだよ。
醜いな、お前ら。
良く死んだスバルの前で喧嘩できるな」

あたしの腕を掴んでいる男が、あたしとマナミを見下ろして嘲笑う。

あたしはもう言い返す気力もなくて、離して、とだけ言うと、漸く腕を解放された。
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