月下美人が堕ちた朝

許せなかった。

この女が、あたしよりも…ツバキさんよりもスバルのことを知っているなんて。

そしてスバルが、あたし以上にマナミを信用していたなんて。

どうしても、許せなかった。

ツバキさんが濡れたタオルを黙ってマナミに手渡す。

マナミも黙って受け取り、男たちは文句を言いながら部屋を出た。

うつ向いて頬を冷やすマナミを見下ろしていると、ツバキさんがあたしの肩を叩いた。

「お腹、大切にしなさい。
どうするか、まだ決めてないんでしょ?」

あたしは頷いて座った。

右手が、痛い。

視線をマナミに戻すと、彼女はゆっくりと言った。

「許さないから。
貴女だけ子供を産んで、スバルと繋がり続けるなんて。
絶対に、許さないから」

自分のお腹をさすり、あたしは自分の思考に驚く。

守りたい、と、思ったのだ。

お腹に在る命を。
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