月下美人が堕ちた朝
これが母性本能というものなのだろうか。

祖母に責められ続けながらも、あたしを産んだ母親の気持ちが少しだけ分かったような気がした。

本当に、少しだけ。

ツバキさんが、小さな声で言った。

「もう責めないで。
辛いのは、貴女もこの子も、私も同じ。
みんな辛いのよ」

話終ったと同時に、マナミが笑い始めた。

あたしもツバキさんも彼女に目をやった。

此処にも悪魔がいたのか。

唇だけで笑う彼女に、背中が少し寒くなる。

「馬鹿じゃないの。
何も分かってないのね。
スバルと最後に逢ったとき、あたしにこう言ったのよ?」

蝉が鳴き叫ぶなか、一瞬の空白で彼女の言葉が耳を裂く。

「俺はアミに、殺されるって」
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