月下美人が堕ちた朝
マナミとスバルのメールを見てしまった朝、あたしは寝ているスバルに跨って彼を起こした。
寝惚けているくせに、あたしの機嫌が悪いことを悟って体を抱き寄せてくれた。
怒るあたしに、ごめんごめん、と、笑いながらキスをしようとした彼を拒んだ。
スバルのキスを拒んだのは、あれが最初で最後。
そして確かにあたしは「スバルを殺す」と言った。
それは脅しなんかではなくて、冗談でもない。
自分が幸せになる方法は、もうそれしか残っていないと、そう思った。
あたしは今、横たわるスバルの横で、マナミの残り香に嫌悪しながら、そんなことを思い返していた。
仕事があるから、と、マナミは乱れたスーツを直してから出勤した。
その背中はスラリと伸びていて、どう見てもホスト遊びなどとは無縁そうに見える。
人は見掛けによらない。
皮肉だわ…、と、ツバキさんが言った。