月下美人が堕ちた朝
警察があたしの名前と顔を知っているのは当然だろう。

被害者の恋人なのだから。

あたしは少し冷静な思考で頷いた。

「あなたも、大丈夫ですか?
酷い隈だ。
寝ていないのでしょう?
無理もない。
恋人が、殺されたんですから」

あたしは返事だけをして、未だ泣き続けるツバキさんの背中を撫でた。

昔、スバルがあたしにしてくれたみたいに。

カドワキはツバキさんの前に腰を降ろして、あたしに喋り続ける。

「気持ちの整理もつかないでしょうが、あなたに何点かお聞きしたいことがあるんですよ。
被害者が殺された当日、ギリギリまで一緒にいましたね?
あの夜のことを詳しく、お話してくれませんか?」

あたしはポツリポツリと、あの夜の出来事を話していく。

喧嘩したこと、スバルが家を出て行った経緯。

全てを話終えると、カドワキは渋い顔でわたしに言った。
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