月下美人が堕ちた朝
20060726am08:18
パトカーの後部座席で、あたしは瞳を閉じて蝉の声を聞いていた。
右側にはカドワキがいて、左側にはタマキがいる。
時折二人の溜め息が交互に聞こえてきて、酸欠状態になりそうだ。
あたしも負けずに溜め息を何度も繰り返す。
意味なんてないのだけれど。
「昨日の昼間、あなた包丁を埋めましたよね?」
この言葉でツバキさんは目を白黒させて、失神した。
マナミと殴り合いになったとき、止めに入った男二人が飛んで来て、ツバキさんを何処かへ運んで行った。
ツバキさんの足元を持っていた男が、あたしの耳元で舌打ちをしていった。
あたしは必死に睨んだけれど、その視線は男の後頭部に向けられるだけで無意味だった。
そしてタマキが言ったのだ。
「署までご同行願います」
お前の方がよっぽどドラマだ!
叫んでやろうかと思ったけど、あの家に居たくなくて出てきてしまった。