月下美人が堕ちた朝
包丁なんて、あたし埋めてない。
だって昨日の昼間は、リンカに逢いに行ってたから。
どこのどいつがワケの分からない証言をしたのか知らないけど、ふざけるんじゃない。
あたしは警察よりも早くスバルを殺した犯人を捕まえなくちゃいけないのに。
聞きたいことがあるなら、全部答えてやる。
さぁ、と、右側にいるカドワキが言った。
「さぁ、着きましたよ。
こちらからどうぞ」
まるで高級レストランのドアボーイみたいに、彼はあたしをエスコートする。
エスコートされる場所が警察署じゃなければ、最高なのに。
あたしは乱暴に車から降りて、照り付ける太陽に顔を背ける。
焼きたくないから。
警察署の玄関には、本当にドラマみたいに見張りがいて、カドワキとタマキに綺麗な敬礼を見せる。
カドワキが「お疲れさん」と言うと、見張りは更に敬礼する。