月下美人が堕ちた朝

その姿は何だか初々しく見える。

色褪せていない制服を見る限りだと、警察官になって間もないことが読み取れる。

玄関を通りすぎると、高校時代を思い出させるような作りの階段がすぐに見えた。

その脇の案内板に目をやると、取り調べ室はどうやら三階らしい。

長そうな階段を見上げて溜め息を吐くと、後ろにいるタマキが言った。

「エレベーターなんてないんだ。
歩きなさい」

横暴な言い方に腹が立って、あたしは前に居たカドワキを追い抜き、二人が追い付けないスピードで階段を登ってやった。

「待ちなさい」

「止まりなさい」

二人は同じ言葉を息を切らしながら繰り返す。

あたしは逃げも隠れもしない。

無責任な証言をする人間に踊らされ、あたしに任意同行を求めるなんて低能な奴ら。

だから日本の警察はレベルが低いなんて、対して外国のことを知らない人にまで言われるんだ。
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