月下美人が堕ちた朝

あたしは三階に着くと、階段の頂上で馬鹿な大人二人を見下す。

真っ赤な顔をしたタマキが、言葉にならない声であたしを罵倒してる。

あたしは口許で笑って、手摺に捕まりながらこちらへ来るカドワキを見ていた。

ようやく二人があたしの目の前に立つと、大きな深呼吸を何度もした。

あたしがもう一度鼻で笑うと、カドワキが言った。

「逃がさないからな」

あたしは彼の言葉にとうとう我慢できずに声を出して笑った。

「何がおかしい!」

タマキが怒鳴る。

笑いが収まって、あたしは二人にこう言った。


「居場所がない人間に、逃げ場所なんてないんだよ」
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