月下美人が堕ちた朝
違う。
悪いのはあたしじゃない。
スバルがあたしを見捨てたからでしょ?
スバルがマナミしか見てなかったからでしょ?
スバルがマナミをかばったからでしょ?
どうして?
好きって言ったよね。
愛してるって言ったよね。
離れないで。
側にいてよ。
スバルと出逢って、あたし初めて人間の温かさを知ったの。
恋を知ったの。
愛を知ったの。
腐敗しきった世の中に、少しだけ光を見たの。
それなのにどうして?
独りにしないで。
頭の中が狂いそうになる。
呼吸が荒くなり、座っているのが辛い。
カドワキがあたしを落ち着かせるように、静かに話始めた。
「我々も、根拠がなければこんな話をしない。
あなたをこんな所へ連れてきたりなんかしない。
証言者がいるんです」
あたしはゆっくり頭をあげて、霞む視界でカドワキの顔をどうにか捕えようとしていた。