月下美人が堕ちた朝
何度も同じことを聞いたような気がします。
そしたら彼、煙草の火を消しながら言ったんです。
「マナミの会社に行って、マナミを殴ったんだって?
なんでそんなことすんだよ。
お前おかしいよ」
頭が真っ白になりました。
彼は機嫌が悪いだけではなくて、明らかにあたしに怒りを向けていました。
あんなことは最初で最後だったような気がします。
八当たりで怒鳴られるのには慣れていました。
だけど、あの時彼は確実にあたしに呆れていました。
愛情なんて一欠片も感じられませんでした。
だからあたし、言ったんです。
「あたしをおかしくさせてるのは誰のせい?
もう二度とマナミに逢わないで。
ねぇ、愛してるって、アミだけ愛してるって言ってよ」
彼は黙り込んで、何も言いませんでした。
時計の針の音だけが聞こえて、凄く寂しくなりました。