月下美人が堕ちた朝

「子供は言うことを聞かないから嫌い」と、スバルが言ったのを聞いて、あたしはリンカに無理矢理逢わせた。

リンカは他の餓鬼と違って、おとなしくて良い子だから。

サクラザワ公園にスバルを呼び出して、5歳だったリンカの手を引いて連れていった。

最初は口も聞かず、見向きもしなかったスバルだけど、リンカの一言で全てが和んだ。

「スバルにぃちゃん、手つなご」

スバルは目を丸くて驚いていたけど、彼の大きな手がリンカの手を握ったとき、思わず涙が出そうになった。

スバルが少しでも変わってくれたことが嬉しかった。

そのきっかけが自分と血が繋がっている姪だったから、尚更だ。

二人は良く笑い、良く遊んだ。

あたしが除け者にされるような気さえした。

それでも良かった。

愛しい二人が笑い合うのを見つめることは、これまでにない幸せだったから。

「俺たちにも子供が産まれたら、こんなふうに笑えるのかな」
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