月下美人が堕ちた朝
20060726am10:06
あたしもあの二人も、あれ以上何も言葉にしなかった。

ただあたしは蘇った記憶を繰り返し再生し、スバルの最期の顔を思い浮かべていた。

すると、グレーの重い扉がゆっくりと開き、若い刑事がカドワキに何かを手渡した。

見覚えのある携帯電話。

スバルの携帯だ。

若い刑事がカドワキに小声で何かを話している。

彼が頷くと、若い刑事は部屋から出て行った。

「これを見なさい」

カドワキはあたしに携帯を差し出し、一通のメールを見せた。

宛先には、あたしの名前があったが未送信のままだった。

日付は「20060725pm11:44」。

多分あたしがスバルを殺す少し前だ。

あたしはゆっくりとメールを目で追った。

「今、サクラザワ公園のベンチに座って考えてた。
今までのこととか、これからのこと。

さっきはごめんな。
傷付けたよな。
ごめんな。
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