月下美人が堕ちた朝
だけどスバルは昨晩「疲れた」と言って、この部屋を出た。
あたしは彼の背中に呟いた。
「さよなら」
そう、確に別れの言葉を呟いたのはあたしだ。
それなのに、今もベランダに出て空を眺めながら、あたしを抱き締める温もりを待ってる。
「おはよう」と言われて
「愛してる」と答えて
腰が砕けそうな、世界で一番甘いキスをする。
それがあたしの一日の始まりで、灰色の風景に色を塗ってくれたのに。
今日は、曇りなのだろうか。
それとも、晴天なのだろうか。
世界が色を、失ってしまった。
「さよなら」