月下美人が堕ちた朝
自分に似合う色を探し続けたら、こんなに買いあさってた。

結局使うのは、いつも同じ色。

マジョリカのメランコリー。

スバルが誉めてくれた、唯一の色だ。

あたしはそれをゴミ箱に捨てる。

もうスバル好みの女になる必要はないのだから。

こうやって、スバルの為に創りあげた「あたし」を、自分で殺していくしかない。

その後に生まれるのが「本来のあたし」なのか「新しいあたし」なのかは、自分でも分からないけど。

あたしは日焼け止めを二・三度振って、薄汚れた顔に伸ばしていく。

今日は日差しが強いから、いつもより多目に。

その後に、下地、コンシーラー、ファンデーション。

こんなときにも
「化粧してるの見てるのって、面白いよな」
と言いながら、頬杖をついているスバルを思い出す。

まるで幼い少女のように、目を輝かせて眺めていたっけ。
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