月下美人が堕ちた朝
その視線を感じながら、スバルが自分を「女」という生き物だと意識していることに優越感を覚えていた。
だからこそ、アイシャドウの色もグロスの色もスバルの好みに合わせていた。
あたしは、溜め息を吐いて脳細胞で鮮明に生き続けるスバルを消す。
そんなことは無意味だと、自分でも分かっているのに。
次に、普段は絶対につけないオレンジ色のチークを頬にのせる。
「チークやめろよ、全然似合わない」
と、スバルに言われてから封印していたけど、あたしはこれが好きなのだ。
少しだけ、明るい女の子になれるような気がするから。
三日月型のアーチを型どった、神経質そうな眉毛を書いていく。
あたしは、この眉毛が大嫌いで、コンプレックスだ。
理由は、母親の眉毛に良く似ているから。
「汚い」
あたしは小さい頃から、母親にそう言われて育ってきた。