月下美人が堕ちた朝
ステンレスの流し場に煙草を押し付け、引き出しから包丁を探す。
どんなに厚い肉でも簡単に切れる、人気商品だ。
先月、アヤねぇに勧められて買ったばかりで大切にしていた。
しかし、いつもの場所にそれがない。
昨日ここでトマトを切っていたはずだ。
それなのに、どこにもない。
スバルとの別れ話のせいで、どうやら本当に昨日の小さな記憶は消滅してしまったらしい。
無理に思い出そうとすると、頭が痛み、立ちくらみまでする。
あたしは諦めて、切味の悪い小さなフルーツナイフで皮を剥き始める。
真っ白な果肉は、まだ少し若いような気がした。
だけど今食べないと、腐らせてしまいそうな気がして、あたしはその場で口に入れる。
甘い。
だけど、苦い。
独りで食べる桃は、甘いのに苦い。
あたしは何かにとり憑かれたように、一気に二つ食べ終えて、その後に全て吐いた。
気持ちが悪い。
どんなに厚い肉でも簡単に切れる、人気商品だ。
先月、アヤねぇに勧められて買ったばかりで大切にしていた。
しかし、いつもの場所にそれがない。
昨日ここでトマトを切っていたはずだ。
それなのに、どこにもない。
スバルとの別れ話のせいで、どうやら本当に昨日の小さな記憶は消滅してしまったらしい。
無理に思い出そうとすると、頭が痛み、立ちくらみまでする。
あたしは諦めて、切味の悪い小さなフルーツナイフで皮を剥き始める。
真っ白な果肉は、まだ少し若いような気がした。
だけど今食べないと、腐らせてしまいそうな気がして、あたしはその場で口に入れる。
甘い。
だけど、苦い。
独りで食べる桃は、甘いのに苦い。
あたしは何かにとり憑かれたように、一気に二つ食べ終えて、その後に全て吐いた。
気持ちが悪い。