月下美人が堕ちた朝
体の不調は、一ヶ月前から続いている。
吐気も、今に始まったことではない。
「つわりじゃねぇの?」
二週間前、スバルに言われた。
もともと生理不順なあたしは、笑いながら否定した。
もしも本当にそうだったら、スバルはどうしていたのだろう。
結果は今と変わらないのかもしれない。
だけどあたしは、この吐気はストレスだと自己診断している。
ちょうど一ヶ月前に、スバルの携帯電話を勝手に見てしまったからだ。
あたし以外の女への「愛してる」の文字を見た瞬間、言いようもない息苦しさと吐気を覚えた。
それからずっと体調が悪い。
弱者だ、あたしは。
ぼんやりする視界の中、手慣れた手付きで嘔吐物を処理する。
マヌケな自分の後ろ姿を見る人間が居なくて良かった。
それが愛するスバルなら、尚更だ。