月下美人が堕ちた朝
その中でも、クロム・ハーツのものが一番多い。

スバルが上手におねだりしたのだろう。

「金に困ったら、これ売れば良いよ。
けっこうな額になるから」

ニヒルな笑顔で言うスバルに腹が立って、本当に質屋にいれたことがある。

クロム・ハーツのネックレスを五個、ジッポを十五個、ブルガリの指輪を八個売った。

金額なんて覚えてないけど、あたしはその金で豪遊した。

しかもスバルが働いているホストクラブで。

確かあの日、あたしはスバルがバイトに出てから一時間後に家を出た。

物凄く悪いことをしているような気持ちになったけど、思いを振り払ってホストクラブのドアを開けた。

「いらっしゃいませ」

テーブルまで案内をしてくれたのは、その辺のコンビ二でタムロしてそうな兄ちゃんだった。

薄暗いホールでは似たような柄の悪い連中たちが、汚い雌豚の金で不釣り合いな高級な酒を水のように飲んでいる。
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