月下美人が堕ちた朝
20060725pm12:36
土から必死にもがいて誕生してきた蝉の声に、あたしはようやく現に戻る。

気が付けば既にアヤねぇの家の前に立ち尽くし、i-podは乱雑にバッグの中に押し込まれていた。

全身からは汗が噴き出していて気持ちが悪い。

やけに喉が乾いていて、とにかく冷たいものを体が欲している。

あたしは右手側にあるインターホンを押そうとしたときに、思わず手が止まった。

自分の手が、土で汚れていたのだ。

左手も汚れていて、爪の中にまで土が入り込んでいる。

あたしは速くなる鼓動を必死に押さえながら、自分の服を見下ろす。

ティーシャツが真っ黒に汚れ、パンツにも土がついている。

覚えていない。

ここへ辿り着くまでの間、あたしは何をしていたのか。

あたしは溜め息を吐き、両手をパンッパンッと数回鳴らして土を落とす。
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