月下美人が堕ちた朝

服の土も払い、あたしは今度こそインターホンを押した。

三秒後に、リンカが二階の窓から顔を出して言った。

「アミちゃん!
おかえんなさい!」

急いであたしを迎えにくる前に、一階に居たであろうアヤねぇが先に玄関を開けた。

「おかえり。
暑いから、早く入って」

アヤねぇは、歳を重ねる事に母親に似てきた。

少し強い語尾や、一筋の乱れもないアップヘアー。

たまに見るとドキッとして萎縮してしまう。

だけど母親と違って、アヤねぇはあたしを大切にしてくれる。

それは小さい頃から変わらないことだけど。

あたしはサンダルを脱いで、抱きついてくるリンカをなだめて洗面所へ向かう。

リンカ専用の手洗い石鹸で、素早く手と爪を洗う。

汚い。

真っ黒な水が排水口へと吸い込まれていく。
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