月下美人が堕ちた朝

こんな風に、あたしの嫉妬や見栄で汚れきった心も洗えれば良いのに。

洗っても洗っても、綺麗になる保証はどこにもないけれど。

洗面台の下に掛けられているフェンディのタオルで手を拭く。

ブランド好きな旦那さんの趣味だろう。

「男の小さいプライドにはウンザリするわ」と溜め息を吐いていたアヤねぇを思い出した。

あたしはフラフラとした足取りで、二人の会話が聴こえるダイニングへ向かう。

「アミちゃん、ケーキあるよ!
ママ作ったんだよ!
食べよ!」

あたしの洗い立ての手を握り、リンカが椅子に座らせてくれる。

アヤねぇが、やる気のないウエイトレスのようにアイスティーとイチゴのショートケーキをテーブルの上に置いた。

あたしは餓死寸前かのようにアイスティーをゴクゴク飲む。

喉を通り、全身が潤っていくのが分かる。
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