月下美人が堕ちた朝
アヤねぇは、あたしの様子に少し驚いた顔をして、すぐにまた背を向けて洗いものを始める。
「昨日作ったんだけど、リンカがあんたとじゃなきゃ食べないって言うから。
悪いけど一緒に食べてやって」
隣ではリンカがニコニコとあたしを見上げている。
あたしは柔かいリンカの髪の毛を撫でた。
純粋なリンカは、あたしがどれだけ汚れた人間かを知らない。
リンカの中のあたしは「ピアノを教えてくれる良き叔母」なのだろうか。
少なくとも、アヤねぇはそう思っているだろう。
あたしはフォークを握り、生クリームを掬って口に運ぶ。
甘い。
甘くて甘くて、再び吐気に襲われる。
それを誤魔化す為に、あたしは残り少ないアイスティーで流し込み、フォークを持て遊んでいた。
そういえば、と、アヤねぇが言った。
「そうえば一昨日、お母さんから電話があったわ」