月下美人が堕ちた朝
アヤねぇは洗い物を済ませたのか、エプロンで手を拭きながら、あたしの向かいの椅子に座った。
あたしは口だけで簡単に返事をして、リンカの口についている生クリームを指で拭ってやった。
リンカの皿の端には、大振りなイチゴが避けてある。
リンカは好きな食べ物は最後に食べる主義だからだ。
「アミが夏休みに入ったから、変な男と遊んでないか心配してた」
あたしは溜め息を吐いて黙り込む。
母親の話題だけで充分ウンザリするのに、スバルの話はどうしてもして欲しくなかった。
「スバルくんのことは言ってないし、別にアミの部屋まで来ることはないだろうから、安心しなさい」
あたしが立ち上がり、冷蔵庫から勝手にアイスティーを取ろうとしたとき、アヤねぇが、やだ、と言った。
「やだ、あんた何?
その顔…。
メイク変えたの?」