月下美人が堕ちた朝
20060725pm01:11

真っ暗な深海の中を、あたしは必死に泳ぎ続ける。

呼吸が止まることを恐れる、魚みたいに。

深海は良い。

雑音がない。

ただ自由に泳ぐことができる。

光がないことを、忘れられるぐらい。

だけど独りは寂しいよ、スバル。

謝るぐらいなら側に居て。

暗闇を二人で泳いでいたいの。

「アミ…アミ…」

長い長い夢を見ていたような、そんな気分であたしは目を覚ました。

視界にはアヤねぇの冷静な顔と、涙を流しているリンカの顔が映る。

あたしはリビングの奥にあるベージュ色のソファーに、横たわっていた。

「急に倒れるからビックリしたじゃない。
顔、青い。
また何も食べてないの?」

アヤねぇが手際良く洗面器で冷やしたタオルを絞り、額の上に置いてくれた。

気持ちが良い。

リンカが「だいじょぶ?だいじょぶ?」と言いながら、あたしの頬に手を当ててくる。
< 47 / 196 >

この作品をシェア

pagetop