月下美人が堕ちた朝
20060725pm01:11
真っ暗な深海の中を、あたしは必死に泳ぎ続ける。
呼吸が止まることを恐れる、魚みたいに。
深海は良い。
雑音がない。
ただ自由に泳ぐことができる。
光がないことを、忘れられるぐらい。
だけど独りは寂しいよ、スバル。
謝るぐらいなら側に居て。
暗闇を二人で泳いでいたいの。
「アミ…アミ…」
長い長い夢を見ていたような、そんな気分であたしは目を覚ました。
視界にはアヤねぇの冷静な顔と、涙を流しているリンカの顔が映る。
あたしはリビングの奥にあるベージュ色のソファーに、横たわっていた。
「急に倒れるからビックリしたじゃない。
顔、青い。
また何も食べてないの?」
アヤねぇが手際良く洗面器で冷やしたタオルを絞り、額の上に置いてくれた。
気持ちが良い。
リンカが「だいじょぶ?だいじょぶ?」と言いながら、あたしの頬に手を当ててくる。