月下美人が堕ちた朝
あたしはゆっくりと左腕を持ち上げて、リンカの手と重ねた。
小さな小さな、可愛い手。
それなのに、リンカの体温はあたしを溶かすように暖かくて心地良い。
あたしがリンカぐらいの歳の頃、こんなに暖かな血が巡っていたのだろうか。
母親に抱き締められた記憶もないあたしに、この問いの答えは一生聞けないのだけど。
「ねぇ、何かあったの?
また喧嘩でもしたの?」
アヤねぇの言葉に驚いたのは、リンカだった。
「え?
アミちゃん、スバルにぃちゃんとけんかしたの?
だから元気ないの?」
あたしはまた目を閉じて、首を横に振った。
いつものクダラナイ喧嘩なら、とっくにアヤねぇに話してる。
「あんな男、今度こそ捨ててやる」とか「別れて後悔させてやる」とか、笑いながら愚痴をこぼして、その後仲直りするのが、あたしたちのパターンだった。
だけど違う。