月下美人が堕ちた朝
今は何も話せない。

自分の中で、何一つ整理されていないのだから。

「話たくないのなら無理に聞かないけど、体を壊すぐらいなら、きちんと解決しなさいよ。
どうせあんたがまた頭に血のぼって、説教したんじゃないの?」

そうじゃない。

そんなことしない。

「まあ良いわ。
アミもスバルくんも若いんだから、別れることも経験になるでしょ。
あたしみたいに早く結婚して子ども産むのも良いけど、中身は空っぽ。
リンカを産んだ二十歳の頃から、成長できないの」

そんなことない。

アヤねぇは変わった。

自分の夢と引き替えに手に入れた家庭。

リンカを妊娠したとき、毎晩泣いていたのを知っていたけど、アヤねぇは強くなった。

きっとそれは、守るものが増えたから。

あたしみたいに、自己愛だけで生きていないから。

空っぽなのは、あたしの方だ。
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