月下美人が堕ちた朝
「もう少し休んでなさい。
何か作るから」
そう言って、アヤねぇはまたキッチンに戻っていく。
リンカはフローリングの床に行儀良く座って、あたしの顔を眺めている。
その綺麗な瞳が、本当はあたしの汚い部分まで見透かしているような気がして、思わず目をそらした。
リンカにだけは、どうして嫌われたくないから。
あのね、と、リンカが言った。
「あのね、この前スバルにぃちゃんと遊んだときね、スバルにぃちゃんが言ってた」
あたしは額のタオルを取って、リンカを見る。
言葉が出ない。
「スバルにぃちゃん、アミちゃんが怖いって」
真っ直ぐな瞳と言葉に、リンカの姿がグラリと歪んで、また意識を飛ばしそうになる。
だけど、間違ってなんかない。
あたしはスバルを愛していたから。
自分でも、怖いぐらいに。
リンカは続けて静かに言った。
「だからやさしくしてあげて」