月下美人が堕ちた朝
だけど今では、母親は勝ち組なのかもしれない。

アヤねぇの旦那さんは、結婚が決ってすぐに医大を卒業し、今では大学病院で内科のトップを争う名医だ。

アヤねぇの自慢をしていたはずが、今では旦那の自慢をしている。

あたしのことは生んだことを忘れたかのように、誰にも話さない。

話すこともないのだろうけど。

あたしはぼんやりと昔の事を思い出しながら、ゆっくりとコーンスープを飲み干していく。

体が暖まってきて、ようやく血が上手く循環してきた。

それにしても、と、アヤねぇが言った。

「それにしても、リンカは本当にスバルくんが好きみたいなの。
この前学校の宿題の作文で、“将来の夢はスバルにぃちゃんと結婚することです”って書いたのよ。
旦那と笑ったわ」

微笑ましく言うアヤねぇの瞳を見て、あたしは大人気なく言う。

「ダメよ、あたしのスバルだもん」
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