月下美人が堕ちた朝
「アミちゃん、どうしたの?
どうしてピアノ上手にひけないの?
リンカがさっきいじわるなことゆったから?」
そうじゃない、と、あたしは首を横に振った。
リンカが言ったことは意地悪でもなければ間違いでもない。
あたしが気付けなかった真実だ。
そして今も尚、あたしはあたしの知らない自分のことが分からない。
分かってしまうのが、怖いのかもしれない。
「アミちゃん、ごめんね。
ごめんね?
仲直りしよ…」
そう言って小さな体が、あたしの体を抱き締めた。
体を震わせながら、必死にあたしの背中を撫でてくれる。
そしてリンカは擦り切れそうな小さな声で、呟いた。
「スバルにぃちゃんにも、こうしてあげて…」