月下美人が堕ちた朝

それは、アヤねぇとリンカが病院から退院した日の写真だ。

この家のリビングで、リンカを囲み、あたしと両親とアヤねぇが写っている。

確か、旦那さんが撮ってくれたものだ。

ぐっすりと眠る赤ん坊のリンカのお陰で、みんな幸せそうに笑っている。

中学校の制服を着た、あたし以外は。

あの頃のあたしは、面倒くさい女の友情に疲れきっていて、プライベートで造り笑顔ができる余力がなかった。

リンカの誕生は本当に嬉しかったのに、あたしは無表情で棒立ちだ。

そんな自分を見たくなくて、あたしは逃げるように次々にページを捲った。

七五三、誕生日、クリスマスパーティ、卒園式、入学式…。

沢山のイベントを、あたしも一緒に参加しているけど、ほとんどの写真が無表情。

全然楽しそうじゃない。

だけど、唯一笑っている写真を見付けた。

今年の四月にスバルと三人で行った、お花見の写真だ。
< 64 / 196 >

この作品をシェア

pagetop