月下美人が堕ちた朝
だけどあたしは何も言わずに、嬉しそうにあたしの顔を覗くリンカに「良かったね」と、言った。

しりとりやなぞなぞをしながら、あっという間に着いたサクラザワ公園は、美しいソメイヨシノが空に向かって咲き誇っていた。

暖かな風が吹く度に、心地良いソメイヨシノの香りが鼻孔をつき、本格的な春の到来を教えてくれた。

「すごぉーい!
スバルにぃちゃん、キレイね!」

リンカはそう言いながら、スバルに肩車をせがんだ。

「仕方ねぇなあ」

言葉は嫌がりながらも、緩んだ口元をあたしは見逃さなかった。

180センチ近くあるスバルに肩車されたリンカは、落ちてくる花弁を捕まえたりして遊んでいた。

小さな手で、ようやく掴んだ花弁をスバルに渡して、彼はそれを大切に財布にしまっていた。

散々遊んだ後、二人はベンチに座るあたしの所へ来て「お腹が空いた」と連呼した。
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