月下美人が堕ちた朝
リンカの優しい気持ちが嬉しくて、あたしまで思わず涙が出そうになった。
あたしがリンカを抱き締める前に、スバルがリンカの手をとり、もう一粒のイチゴキャラメルを握って、後ろ側のソメイヨシノに近付いた。
あたしはベンチに座ったまま後ろを振り返り、二人の背中を眺めた。
スバルがリンカの視線まで腰を下ろし、握っていたイチゴキャラメルにキスをして言った。
「だいじょーぶ。
このキャラメルは、魔法の種になったから」
驚いたリンカは黙ってスバルの顔を見ていた。
彼はその辺にあった太い棒で穴を掘り始め、イチゴキャラメルを土に埋めた。
「あっ!」
その瞬間に、あたしとリンカは同時に声をあげた。
するとスバルがまた、だいじょーぶ、と、言った。
「だいじょーぶ。
これは魔法の種になったの。
さっき俺がチューしたから。
今から五つ数えると、イチゴキャラメルの木が生えてくんだよ。
はい、リンカもアミも目ぇ瞑って」