月下美人が堕ちた朝
リンカは半信半疑で目を瞑り、あたしは苦し紛れなスバルの台詞に少し呆れていた。

「5、4、3、2、1」

目を開けると、やっぱりそこには何もなくて、ソメイヨシノが風に吹かれて笑っているような気がした。

「スバルにぃちゃんのうそつき!」

リンカはその時始めてスバルを怒り、彼の胸を叩いた。

スバルは笑いながらリンカを抱きあげて、ソメイヨシノの落ちてくる花弁を掴んで言った。

「俺はリンカに嘘吐かないよ。
これがイチゴキャラメルの実。
食べてみたい?」

リンカが黙って頷くと、花弁をスバルが口に含み、リンカに優しくキスをした。

「イチゴの味したでしょ?」

「…した」

「ね?
イチゴキャラメルの木、生えたでしょ?」

「…生えた」

それは本当に魔法みたいで、すぐにリンカは泣きやんだ。

その帰り道、スバルはあたしだけに種明かしをしてくれた。
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