月下美人が堕ちた朝

ガラスで出来たビーンズ型のテーブルの上に鏡を置いて、コスメボックスからは化粧水と乳液を取り出す。

そしてテーブルの前に座って、ラジオをつける。

そろそろ、陽気なDJが変な英語で登場するはず。

だけど彼が流す曲はセンスが良い。

ブルースやジャズも、知識が皆無なあたしでも聞きいってしまうぐらい。

いつも通りの朝。
いつもの習慣。

それなのにオカシイ。

何か足りない。

何か足りない。

スバルが居ない。

そうだ。
スバルが居ないのだ。

ホスト仲間の先輩に、朝まで酒を付き合わされてるわけじゃない。

ブランドものに散歩されてる風俗嬢と、枕営業してるわけじゃない。

そんな深読みや疑りをする必要はない。

権利もない。

居ないのだ、スバルは。

そう。
とても単純なことだ。

あたしはもう、スバルの恋人ではない。
< 7 / 196 >

この作品をシェア

pagetop