月下美人が堕ちた朝
ガラスで出来たビーンズ型のテーブルの上に鏡を置いて、コスメボックスからは化粧水と乳液を取り出す。
そしてテーブルの前に座って、ラジオをつける。
そろそろ、陽気なDJが変な英語で登場するはず。
だけど彼が流す曲はセンスが良い。
ブルースやジャズも、知識が皆無なあたしでも聞きいってしまうぐらい。
いつも通りの朝。
いつもの習慣。
それなのにオカシイ。
何か足りない。
何か足りない。
スバルが居ない。
そうだ。
スバルが居ないのだ。
ホスト仲間の先輩に、朝まで酒を付き合わされてるわけじゃない。
ブランドものに散歩されてる風俗嬢と、枕営業してるわけじゃない。
そんな深読みや疑りをする必要はない。
権利もない。
居ないのだ、スバルは。
そう。
とても単純なことだ。
あたしはもう、スバルの恋人ではない。