月下美人が堕ちた朝

あたしのピアノをリンカが嫌がって泣いた、なんて、口が裂けても言えなかった。

もしそれがアヤねぇに知られたら、こんなふうにリンカに逢うことはなくなってしまうような気がしたから。

アヤねぇは少し困ったように笑って言った。

「寝ちゃったの?
仕方ないわね…。
夏休みのラジオ体操で、いつもより早起きしてるから疲れたんだわ。
晩御飯、食べていくんでしょ?」

あたしは黙ってそれを断った。

食欲はないし、リンカと合わせる顔もないからだ。

「どうして?
スバルくん、どうせ今日もいないんでしょ?
一人だとろくなもの食べないんだから、家で食べていけば良いのに」

あたしは固くなに断り続け、リビングに置いたままだった自分のバッグを急いで取った。

すると壁に貼りついてあった、アンティーク時計が三回金を鳴らした。

五時になったのだ。
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