月下美人が堕ちた朝
小窓からは二人の天使が出てきて、可愛らしいキスをした。
この時計は、アヤねぇが実家から持ってきたものだ。
あたしはこの時計の金の音が酷く嫌いで、実家に住んでいるとき、父親に外すように何度もお願いした。
しかし、同じ理由でいつも断られた。
「ダメだ。
絶対に外さない。
この二つの天使は、お前とおねぇちゃんなんだから」
あたしはあの天使のように、可愛い容姿もしていなければ、背中に羽も生えていない。
それに、両親があたしのことを天使だなんて思っていないことも、あたしは知っていた。
だけどアヤねぇは、この時計を気に入っていて、嫁ぐときにまで持ってきたのだ。
時計を睨みつけるように眺めるあたしに、アヤねぇが言った。
「アミはその時計、大っ嫌いだよね。
初めてこの時計が実家にきたときも、金が鳴る度ギャーギャー泣いて大変だったんだから」