月下美人が堕ちた朝
「確に異常だったと思うの、あの頃のお母さん。
アミばかりに辛く当たって、私も悲しかった。
だけど仕方なかったのよ。
病気だったから…」
あたしはまた鼻で笑った。
病気?
自分が腹を痛めて生んだ子供に暴力や罵倒を浴びせる病気?
ふざけるな。
冗談じゃない。
あたしはアヤねぇを無視して、横を通り過ぎようとしたとき、右腕を強く捕まれた。
「アミ、あなたが大人になって許してあげて。
お母さんは精神的に追い詰められてたのよ。
お婆ちゃんに私たちの躾のことを責められたり、他の孫と比べられたり…。
私もアミも、辛かった。
みんなみんな辛かった。
だけどそれ以上に、お母さんも苦しかったの」
リンカを生んで、その気持ちがようやく分かった、と、アヤねぇは続けて言った。
あたしがここで、にっこり笑って「許す」と言ったら、何か変わるのだろうか。