月下美人が堕ちた朝
嗚呼、今日の曲も素晴らしい。
シャンソンなのだろうか。
歌声が切なくて甘美だ。
フランス語で歌われているであろう、その曲は一体何を言わんとしているのだろうか。
意味は全く分からないのに、あたしには恨み節に聞こえた。
朝からこんな曲を聞いていたら、きっとスバルはラジオを消して、大好きなハードコアを流すのだろう。
あたしはそんなことを考えながら、化粧水と乳液をコスメボックスに戻した。
「毎朝、毎晩使うものをどうしていちいち箱にしまうの?」と、不思議そうに言ったスバルの台詞を思い出して、妙におかしい。
どうでも良い、小さなことばかり思い出して困る。
あたしはヒビが入っている鏡で苦しそうに笑う自分を罵った。
「馬鹿みたい」