月下美人が堕ちた朝
20060725pm05:27

煙草が吸いたい。

体がニコチンを欲していて、落ち着かない。

歩きながら首から流れる汗を右手で拭って、自分の家から近いコンビ二の入り口で、灰皿の前を占拠して煙草を吸った。

思いきり煙を吸い込んで、そのまま空を見上げた。

青空に浮かぶ白い雲が、風に背中を押されて進んでいく。

まるで、あたしとスバルみたいに。

スバルが「頑張れ」と言えば頑張れた。

スバルが「大丈夫」と言えば頑張れた。

だからもう頑張れない。

聞きたい声が、聞こえない。

青空に向かって煙を吐き出したとき、誰かがあたしの名前を呼んだ。

「アミ?」

懐かしくはなかった。

あたしは心のどこかで彼を頼りにしていたし、十五年間も側に居てくれた人の声は忘れたりしない。

幼馴染みの、カズヤだ。

タクマの声は忘れたくせに、都合の良い自分が情けない。
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