月下美人が堕ちた朝
20060725pm05:53
少しだけ渋滞に捕まったものの、カズヤの家に到着した。
それはいつ見ても豪邸で、入るのに少し躊躇してしまう。
代々医者の家系で、カズヤはそれが重荷なんだと、大学受験のとき言っていた。
彼は先程のように、助手席のドアを開けてくれる。
あたしはお礼を言って、玄関に続く広い庭を歩いた。
先を歩くカズヤが、振り返らずに言った。
「お袋喜ぶよ。
アミのこといつも気にかけてたから」
カズヤのお母さんは、歳こそ分からないが、若くて可愛らしい。
あたしは子供のときから、ふざけて「ユウコさん」と呼んでいた。
「おばさん」と呼ぶには、不釣り合いな気がしていたから。
大きなドアの鍵を開けて、ただいま、と、カズヤが言った。
「ただいま。
お袋、お土産連れてきた」
あたし思わず笑ってしまう。
あたしをお土産と言ったカズヤが、何だか可愛らしかったから。