月下美人が堕ちた朝
20060725pm05:53

少しだけ渋滞に捕まったものの、カズヤの家に到着した。

それはいつ見ても豪邸で、入るのに少し躊躇してしまう。

代々医者の家系で、カズヤはそれが重荷なんだと、大学受験のとき言っていた。

彼は先程のように、助手席のドアを開けてくれる。

あたしはお礼を言って、玄関に続く広い庭を歩いた。

先を歩くカズヤが、振り返らずに言った。

「お袋喜ぶよ。
アミのこといつも気にかけてたから」

カズヤのお母さんは、歳こそ分からないが、若くて可愛らしい。

あたしは子供のときから、ふざけて「ユウコさん」と呼んでいた。

「おばさん」と呼ぶには、不釣り合いな気がしていたから。

大きなドアの鍵を開けて、ただいま、と、カズヤが言った。

「ただいま。
お袋、お土産連れてきた」

あたし思わず笑ってしまう。

あたしをお土産と言ったカズヤが、何だか可愛らしかったから。
< 85 / 196 >

この作品をシェア

pagetop