月下美人が堕ちた朝
あたしは玄関先に入り、パタパタとスリッパの鳴る方向に目を向けた。
久しぶりに見たユウコさんは、前よりまた可愛らしくなったような気がして羨ましかった。
「アミちゃん?
アミちゃんなの?
驚いたわ。
早くあがりなさい。
嬉しい、逢いたかったのよ」
サンダルを脱いだあたしをユウコさんは力一杯抱き締めてくれた。
母親に抱き締められた記憶はないのに、どうして懐かしいのだろう。
あたしも目を瞑って抱き締め返し、心地良いコロンの香りを吸った。
カズヤが、お袋、と、言った。
「お袋、暑苦しいから離れてやれよ。
嬉しいのは分かるけどさ。
ほら、アイス。
溶けるから冷凍庫に入れて」
ユウコさんより遥かに背の高いカズヤが、ユウコさんの頭を二、三度優しく叩く。
それがまるで歳の離れたカップルみたいで、不思議な感覚になる。
ユウコさんは少しだけ怒りながら言った。