月下美人が堕ちた朝
この絵は、特にお気に入りらしく、大学合格の際にプレゼントしてくれたらしい。
淡い色合いに繊細なタッチが、今のあたしを癒してくれるような気がした。
するとドアの方からカズヤの笑い声がした。
「なにつっ立ってんの?
座れば?」
あたしは我に返って、スカイブルーのクッションの上に座る。
カズヤは両手にアイスココアを持っていて、それを真っ白なテーブルに置いた。
「子供扱いしてんのはどっちだよなあ…。
俺はココアよりコーヒーが飲みたいのに」
カズヤはあたしの隣に座り、ストローでココアをかき混ぜながら言った。
プライドが高くても、全然嫌味じゃないのがカズヤの良いところ。
あたしはそんなことを考えながら、カズヤと同じようにココアを混ぜる。
アミ、と、カズヤが言った。
「アミ、お前は最近、どうなの?
あれ以来金借りにこないけど、上手くやってんの?」