月下美人が堕ちた朝
自分のことを聞かれているのに、あたしはどこか他人事のように感じていた。
もしかしたらそれは、スバルと居る自分と、カズヤと居る自分に、区別をつけたかったからかもしれない。
だけどあたしは、カズヤに嘘は吐けなかった。
スバルが昨日部屋を出て行ったこと。
そのときの記憶がないこと。
リンカに嫌われたこと。
アヤねぇと喧嘩したこと。
体の調子が悪いこと。
全てを話した。
話して居る途中、呼吸が苦しくなったのに、カズヤが背中を摩ってくれると、不思議とラクになった。
カズヤの手は暖かくて、冷えきったあたしの心を溶かしてくれるみたいだ。
カズヤは溜め息を吐いて、だから…、と、言った。
「だから…だからそんな顔してたのか。
さっきコンビニで逢ったとき、小学生のときのアミを思い出した。
全てのものに絶望したような、そんな顔」
あたしはうつ向いて黙っていた。