明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 午前中に正岡の教える数学の授業があり、生徒はにやにや笑っていたが、正岡に直接尋ねる事はしなかった。

正岡はいつも生徒に問題を黒板でとかせるが、その日だけは一人で問題の解答までを終わらせてしまい、生徒と関わる機会を極力避けていたのだ。

 待ちに待ったホームルームでは男子生徒が昼休みに作戦会議をし、正岡に誰が聞くかで盛り上がっていた。だが、正岡の代わりに教室に現れたのは、副担任の佐田先生だ。彼女によれば正岡は体調不良で帰宅したそうだ。

 ホームルームを終えると遠藤が声を出す。

「佐田先生は正岡先生に彼女がいることを知ってますか?」

 佐田先生の目には明らかな同様が映る。
 どういった経緯でかはわからないが、先生側にもあの写真が知れ渡っているのだろう。

「感想はどうですか?」

「先生、正岡先生の彼女、誰か知ってますか?」

 口々に投げかけられる問いに、彼女は返事につまり、咳払いをした。

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