明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
 両手で教卓を叩く。だが、一度盛り上がりを見せた生徒たちの火はなかなか消えない。

「くだらない事は言ってないで帰りなさい」

 彼女は生徒の好奇心のまなざしに耐えられなくなったのか、必要事項だけを伝えると、そそくさと教室を後にしていた。

 その話には翌日には他のクラスにも十分認知されるようになっていた。

 翌日から、正岡は学校に来なくなり、事情は急病のためと説明されていた。


 正岡の写真がばらまかれた翌々日、教室の扉をあけると、教卓に人だかりができていた。

 私はあの正岡の写真を思い出し、眉根を寄せ、教卓まで行く。

 その輪の中心にいたのは馬場桃子だ。

 教卓の上に広げられていたのは、卒業アルバムらしきページをカラーコピーしたものだ。

 そこにはこの学校の制服を着ているものの、見知らぬ人が並んでいる。

「どうしたの?」

「この人、写真の女の人に似ていない?」

 馬場さんが指さしたのはその中段に移る女性だ。

 
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