明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「俺が好きになって告白して付き合い始めたから、芽衣が俺のことをどう思ってくれていたかはわからないけど」
「好きだったと思いますよ。きっと」

 私がそう言うと、彼は目を見張る。
 そして、小さな声でありがとうと告げた。

 それは彼を気遣った言葉ではない。
 そうでなければ、彼と別れ、明香に無関係だと主張しただろうから。
 彼の彼女でい続けたことが、芽衣の気持ちの表れのような気がしたのだ。

「芽衣はずっと悩んでいたような気がする。聞いても教えてくれなかったけど、亡くなってから携帯に君以外の番号が入ってなかったと聞いて驚いたよ」


 彼は寂しそうに笑う。

 だから、彼は私の名前を知っていたのだ。

「私は彼女が亡くなる前日に仲良くなったんです。もっと早く声をかけていたらよかったと思います」

「亡くなった日は様子がおかしかった?」

「その日は熱を出して、彼女には会っていないんです」

 私には彼女から もらったメールのことが頭を過ぎるが、言い出せなかった。

「学校で何かあった? 彼女は絶対クラスで遭ったことを俺には言わなかったから。芽衣には君以外友達がいなかったのかな」
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